明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『悪美人』 渡辺霞亭(?)

悪美人:渡辺霞亭(?) 1895年(明28)日吉堂刊。 この作品はNDLのデジタル・コレクションで偶然に見つかった。表紙の次にいきなり本文が始まり、故意か過失か、作者名が表記されるはずの中表紙もなかった。しかも最後尾の奥付にも著者名は省かれていた。想…

『東京ルムバ』 中野実

東京ルムバ:中野実 1949年(昭24)週刊「サンデー毎日」連載。 1953年(昭28)東方社刊。 ヒロインの淡路笙子は窃盗の罪で刑務所に入っていたが、妊娠中で出産のため、仮出所した。結果は死産だった。彼女はそのまま入院先から逃亡し、安アパートに隠れてい…

『秘密の鍵』 春日野 緑

秘密の鍵:春日野緑 1926年(大15)サンデー・ニュース社刊。「探偵趣味叢書」第2編。 作者の春日野緑(かすがの・みどり、1892~1972)は大阪毎日新聞の社会部副部長だったが、2歳年下の江戸川乱歩に働きかけ、1925年(大14)に「探偵趣味の会」を発足させ…

『社会部記者』 島田一男

社会部記者:島田一男 1959年(昭34)春陽文庫刊。 第4回探偵作家クラブ賞受賞作。「午前零時の出獄」、「遊軍記者」、「新聞記者」、「風船魔」の4つの連作短篇集。全体を通して東京日報社会部の記者たちの事件を追う姿を描く。中心人物として部長の北崎が…

『きんぴら先生青春譜』 鳴山草平

きんぴら先生青春譜:鳴山草平 1954年(昭29)4月~1955年(昭30)6月、雑誌「婦人生活」連載。 1959年(昭34)講談社、ロマンブックス。 鳴山草平(なるやま・そうへい、1902~1972)は戦中期に時代小説で直木賞候補にもなったが、戦後は自身の教員としての…

『脱獄囚』 大下宇陀児

脱獄囚:大下宇陀児 1938年(昭13)皇文社刊。 戦中期の抑圧された時期にさしかかる頃の出版。短篇小説一つだけの小冊子だった。地方の町や村を巡業する旅回りの一座。客の入りは芳しくない。女優の百合子のもとに家出をしてきた少年信吉が現われる。彼は百…

『三面鏡の恐怖』 木々高太郎

三面鏡の恐怖:木々高太郎 1955年(昭30)春陽堂書店、探偵双書。 探偵小説に文芸味も盛り込ませた木々高太郎の中篇。表題作『三面鏡の恐怖』の他『銀杏の実』を併収する。 水力発電に電源開発の夢を抱き続ける真山十吉は、財閥令嬢との結婚により資金面の後…

『緋牡丹記』 有田治

緋牡丹記:有田治、岩田専太郎・画1 1949年(昭24)1月~5月、『朱唇帖』のタイトルで小島政二郎が雑誌「婦人生活」に連載そして中断。 1949年(昭24)6月~1951年(昭26)9月、『緋牡丹記』のタイトルで有田治の草稿のまま、同雑誌に連載を継続。 1954年(…

『ハートの3』 高橋筑峰

ハートの3:高橋筑峰 1916年(大5)春江堂書店、冒険叢書第7.8編、前後2巻。 大正初期に数多く輸入上映された米国製無声映画のノベライズ本のようにも思えた。原作者名も明記されておらず、活動弁士が語るような記述になっている。高橋筑峰には講談の速…

『愚弟賢兄』 佐々木邦

愚弟賢兄:佐々木邦、田中比左良・画 1942年(昭17) 大都書房刊。 1953年(昭31) 大日本雄弁会講談社刊。 佐々木邦(くに、1883~1964)は日本のユーモア作家の草分けとも言われ、明治末期から大正、昭和そして戦後まで、長年にわたる作家活動を続けた。 …