明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『大東京四谷怪談』 高木彬光

大東京四谷怪談高木彬光

1978年(昭53)光文社刊、カッパノベルス

 高木彬光の生み出した名探偵の一人、墨野隴人(すみの・ろうじん)の活躍する事件簿の第3作。その名前はバロネス・オルツィの名探偵「隅の老人」にあやかっているが、本業は企業コンサルタントで、ピアノ演奏はプロ並み、探偵は余技として、あまり自身の身辺を明かさない。

 物語の語り手は有閑未亡人の村田和子。「四谷怪談」の現代劇バージョンを依頼された作家が、夜な夜なお岩と名乗る謎の女からの電話で仕事を妨害されている。供養のための墓参りの後で、蝋人形作家のアトリエを訪ね、お岩の人形に刺青を施しているのを見学するが、その夜、その蝋人形作家と彫師の二人が惨殺されているのが見つかる。怪談になぞらえるように次々と事件が起きるが、墨野隴人が表立って捜査する動きはなく、関係者たちから話を聞いて意見を言う、あるいは推理を語るスタンスに徹する。高木彬光の刺青の世界に関する深い思い入れを感じさせはするが、個人的には嫌悪感のほうが勝ってしまった。☆

 

大東京四谷怪談高木彬光、滝瀬源一・画

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/12559022/1/3

挿絵(イラスト)は滝瀬源一。

 

 

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