
1939年(昭14)興亜書房刊、初版。
1941年(昭16)興亜書房刊、25版。
戦中期の少年少女向け探偵冒険小説集。特に短篇の方は少女たちが主人公のものが多く、恐らく少女雑誌に掲載されたものと思われる。初版後2年間で25版を重ねており、よほどの人気があったと思われる。表題作の中篇「魔法少年」の他に「奇妙な土産」、「光栄の柩」、「消える少女」などの短篇6篇を併収。

「魔法少年」では、孤児の春夫少年が大道芸で催眠術を実演している。彼が売上金を奪われてケガをするのを見ていた芳子は、その手当のために家に連れて行き、両親に頼んで寄宿させることにする。一家を襲う強盗や誘拐の事件に対し、春夫少年はその魔法のような催眠術を駆使し、勇敢に一味と戦う。森の中の洞窟やしたたかな老婆や火攻めの計略など、緊張感を醸し出す筋立てで少年少女向けとしては良く出来ていた。☆☆

短篇の中では「光栄の柩」がフランスの灯台守を題材とする翻案(翻訳?)物となっている。この当時ドイツと日本は軍事同盟を結んでいたが、その前の第一次大戦の時は敵対国で、日本はドイツ領の青島などを攻撃していた。軍事スパイの「独探」という呼称も探偵物では悪役として登場していた。その影響もあるのだろうが、この話ではドイツで育ったフランスの少年が祖父の守る灯台のそばで暮らしていて、ドイツ軍の諜報機関に灯台が悪用されるのを命を懸けて防御し、フランスへの愛国心を全うするという筋になっている。戦中期にしては親フランスの珍しい作品だと思う。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載
https://dl.ndl.go.jp/pid/1847916
挿絵は晴山英多。