
1955年(昭30)東方社刊、東方新書。
表題作『やがて青空』のほか、『女心を誰が知る』、『恋の十三夜』の中篇計3作を収める。

『やがて青空』は1955年に東宝で映画化された軽妙なタッチのラブコメディ。高校教師の家庭に住む姉と弟。姉のいづみは流行誌のヤリ手記者、弟の喬夫は大学のボート部の選手。いづみは張り切って出向いた取材先でライバル社の記者の岩谷を人違いする失敗をするが、ろくに謝りもせず、むしろ反抗心を抱く。その岩谷がOBとして喬夫の合宿の面倒を見る。気の強かったじゃじゃ馬娘の気持が次第に恋情へと変化していく明朗篇。☆

『恋の十三夜』も1949年に松竹大船で映画化された。タイトルからして文芸的な香りのする恋物語。京都の舞妓と大学生との淡い恋の転変を描く。大学生は東京の華族家の次男だが、かねてから進められてきた金満家令嬢との縁談のために、家令が舞妓の親の許を訪れ、この恋を諦めるように頼む。一方で、舞妓にはお得意様の実業家から料亭の経営を任せるオファーが来る。これには言外に身柄を引き受けたいという意味があった。上辺だけの惚れた晴れたの言葉が交わされる花柳界で、真情を通すことの困難さを乗り越えようとするヒロインの一途さが共感を呼ぶ。筋運びがあらすじのようにトントン進んで物足りなかった。そのままシナリオになりそうで、映画化には最適だったようだ。映画評ではヒロインの京都言葉が今一つと言われたが、主演の折原啓子の上品な美しさには惹かれた。☆

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1354770
カバー絵は風間完。
※参考サイト
日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために
※参考動画
恋の十三夜(1949年)- 原 研吉 / 13 Night of the Love - Kenkichi Hara
https://www.dailymotion.com/video/x3ogixl
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