明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『社会部記者』 島田一男

社会部記者:島田一男

1959年(昭34)春陽文庫刊。

 第4回探偵作家クラブ賞受賞作。「午前零時の出獄」、「遊軍記者」、「新聞記者」、「風船魔」の4つの連作短篇集。全体を通して東京日報社会部の記者たちの事件を追う姿を描く。中心人物として部長の北崎が部席に居座り、記者たちに次々と指示を飛ばし、警察との連絡、関係部署との調整等リーダーシップを発揮する。個々の記者たちの個性はあまり深く追わず、ドライなドキュメンタリー調で進めるのも当時の手法の一つだった。

 

午前零時の出獄:大映(1950)

 1950年大映、1963年日活と二度映画化された「午前零時の出獄」は、刑務所から出所する男が顔役ににらまれて、消されそうな所を記者たちの計略で救い出し、かくまううちに別の殺人事件が起きるというスリリングな一篇。☆☆

午前零時の出獄:大映(1950)

 最後の「風船魔」は美人ダンサーが殺されて、多くの風船に縛りつけられた死体が東京の空を浮遊するという、江戸川乱歩張りの猟奇的な光景が興味深い。警察に先んじて真相の究明に奔走する記者たちの気迫が快い。☆☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1647799

 

午前零時の出獄:大映(1950)

《そんな機械類の響きを伴奏に、新聞工場から浪曲まがいの文選節がつたわってくる。ノド自慢の文選工が、楽しそうに声をはりあげて原稿を読みながら、連載小説の活字を拾っているのだった。》(風船魔)

 

「ふーん、確かに美人だ。うりざね顔に富士額、まゆ新月にして丹花のくちびる……か。歌麿描く江戸まえの美女だよ」(風船魔)



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